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外国人材の定着とは。官庁の統計で見る離職・失踪の実態と、監理団体・登録支援機関にできること

外国人材の定着とは、来日した方が、辞めずに、失踪せずに、同じ職場で働き続けることです。この記事は、離職と失踪の実態を官庁の統計で確かめ、受け入れ企業・登録支援機関・監理団体のそれぞれにできることを整理します。

制度の確認日 (出典は記事の最後にあります)

この記事の要点

  • 特定技能外国人の自己都合による離職者は、制度の施行から2022年11月までの延べ人数で19,899人。在留者数に占める割合は16.1%です(入管庁の暫定値)。離職後は、帰国が31.4%、特定技能での転職が30.3%です。
  • 技能実習生の失踪者数は、2023年の9,753人から、2025年は3,950人に減りました(入管庁の速報値)。
  • 事業所が挙げる課題の1位は「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」43.9%。外国人労働者が困ったことでは「どこに相談すればよいかわからなかった」が14.9%です(厚生労働省 令和6年外国人雇用実態調査)。
  • 定着に関われるのは、受け入れ企業だけではありません。登録支援機関の義務的支援と、監理団体の相談対応は、法令で決まっている場面です。

外国人材の定着とは

「外国人材の定着」は、法令で定義された言葉ではありません。厚生労働省は、外国人が職場や地域で円滑に定着することを目的として、令和2年度から令和4年度に「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」を行いました。

その事例集は、外国人の定着における地域の課題として、地域との関わりが持てないことと、住居・交通・買い物などの生活の利便性を挙げています。定着は、職場だけの話ではありません。

この記事では、外国人の定着を「辞めない、失踪しない、同じ職場で在留を続けて働く」ことと読みます。その反対側にある出来事が、離職・転職と、失踪(行方不明)です。

どちらの出来事も、制度ごとに届出があります。特定技能では、受入れの継続が困難になったときの随時届出。技能実習では、監理団体等が外国人技能実習機構に出す技能実習実施困難時届出です。官庁の統計は、この届出をもとに作られています。

根拠: 厚生労働省「地方自治体向け事例集 外国人の定着のための自治体の取組事例」、入管庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」、同庁「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」

数字で見る、離職と失踪の実態

官庁が公表している数字を、制度ごとに並べます。「定着率」という統計はありません。手がかりになるのは、離職と失踪の届出の集計です。

指標数字出典
特定技能外国人の自己都合による離職者(延べ)19,899人(制度の施行から2022年11月まで)。2022年11月末の在留者数123,687人に占める割合は16.1%入管庁 有識者会議(第3回)資料2-1(暫定値)
分野別に割合が高い宿泊 32.8%、農業 20.1%同上
自己都合で離職したあとの状況帰国 31.4%、特定技能での転職 30.3%、別の在留資格へ変更 15.1%同上
技能実習生の失踪者数2021年 7,167人 → 2022年 9,006人 → 2023年 9,753人 → 2024年 6,510人 → 2025年 3,950人(前年比 −39.3%)入管庁「技能実習生の失踪者数の推移(令和3年〜令和7年)」(速報値)
特定技能外国人の行方不明者2021年に76人。特定技能外国人数に占める割合は0.14%入管庁 有識者会議(第3回)資料2-1
就労上のトラブルや困ったことが「あった」外国人労働者全体で10.9%。技能実習 13.2%、特定技能 9.0%厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査」(2024年9月30日時点)

失踪者数は、監理団体等から外国人技能実習機構に「行方不明」を理由とする実施困難時届出が出された人数です。届出から3か月以内に所在が確認できた方を除くと、2025年は2,881人です。

特定技能の離職の数字は、2023年の有識者会議に出された暫定値で、2022年11月までの集計です。最新の数字は、入管庁の公表資料でご確認ください。

根拠: 入管庁「技能実習生の失踪者数の推移(令和3年〜令和7年)」(令和8年7月・速報値)、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第3回)資料2-1、厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査の概況」

なぜ定着しないか。ご本人と事業所の答え

理由は、ご本人に聞いた調査と、事業所に聞いた調査の両方があります。どちらも官庁の調査です。

ご本人の答え(技能実習生)

入管庁が2022年5月から6月に行った意識調査では、技能実習生1,770人のうち、実習先を変えたいと考えたことが「ない」と答えた方が70.8%でした。「ある」の理由は、次のとおりです(複数回答)。

実習先を変えたいと考えた理由割合
来日前に期待した給料を得られないから11.8%
来日前に思ったより仕事がきついから6.6%
生活環境が不便だから4.7%
他に働きたい実習先があるから4.7%
実習先の人間関係が悪いから4.5%
期待どおりに技能習得が進まないから2.9%
友人、知人、同国人などに誘われたから2.5%

事業所の答え

厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査で、外国人労働者の雇用に関する課題(複数回答)は、次の順でした。

  • 日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい 43.9%
  • 在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑 24.7%
  • 在留資格によっては在留期間の上限がある 21.5%
  • 文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある 20.9%
  • 特にない 17.4%

働く外国人が困ったこと

同じ調査で、就労上のトラブルや困ったことが「あった」と答えた方のうち、多かったのは次の3つです(複数回答)。

  • 紹介会社(送出し機関を含む)の費用が高かった 18.6%
  • トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった 14.9%
  • 事前の説明以上に高い日本語能力を求められた 8.8%

技能実習では、費用が高かったが39.9%、事前の説明以上に会社に入るまでに時間がかかったが13.1%、相談先がわからなかったが9.3%でした。

日本語で、困りごとを言葉にできるか

同じ調査の日本語能力(会話)では、技能実習の方は「日常的なことなら短い会話に参加できる」が46.6%、「基本的な挨拶の会話はできる」が22.1%、「日本語で会話はほとんどできない」が2.1%でした。特定技能の方は、それぞれ32.2%、16.0%、2.0%です。

仕送りをしている方は、技能実習で83.5%、特定技能で81.6%です。1年間の仕送りの平均は、特定技能が123.3万円、技能実習が106.3万円でした。

ここから先は、当社の考えです

「給料が期待と違う」「相談先がわからない」「短い会話しかできない」。この3つが重なると、困りごとは日本語で言葉にならないまま、辞める意思だけが固まります。定着の入口は、ご本人が十分に理解できる言語で、小さなうちに聞くことだと考えています。

根拠: 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第3回)資料2-1「特定技能制度及び技能実習制度に関する意識調査(抄)」、厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査の概況」第10表・第14表・第20表・第22表

定着に関わる3者と、それぞれの場面

外国人の定着に関われるのは、受け入れ企業だけではありません。登録支援機関と監理団体には、法令で決まった場面があります。

だれ定着に関われる場面根拠
受け入れ企業(特定技能所属機関・実習実施者)適切な人事管理、生活支援、苦情・相談体制の整備など7項目。多くは努力義務です。常時10人以上を雇用するときは、雇用労務責任者を選任します厚生労働省 雇用管理指針 第四の五・第六
登録支援機関(特定技能)義務的支援10項目。相談・苦情への対応と、3か月に1回以上の定期的な面談は、在留中ずっと続きます。面談の相手は、ご本人と、その監督をする立場にある者の双方です特定技能基準省令 第3条第1項第1号
監理団体(技能実習)・監理支援機関(育成就労)技能実習生からの相談に適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を講じます。2027年4月1日に始まる育成就労では、相談への対応と、地域社会との共生に向けた取組が、優良な監理支援機関の評価事項に入ります技能実習法施行規則 第52条第14号、入管庁「育成就労制度Q&A」Q37

転籍の決まりも変わります。特定技能1号は、同一の業務区分内などで転職が認められています。2027年4月1日からの育成就労では、一定の要件のもとで、本人の意向による転籍ができるようになります。

定着は、囲い込むことではなく、働き続ける場所として選ばれ続けることになります。機関が毎月できることは、外国人の定着を図るには。監理団体・登録支援機関が、毎月できること にまとめました。

根拠: 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」、特定技能基準省令 第3条第1項第1号ヌ、技能実習法施行規則 第52条第14号、入管庁「育成就労制度Q&A」Q37・Q48、同庁「特定技能制度に関するQ&A」Q13

定着のために、まず何を変えるか

ここから先は、当社の考えです

効果を数字でお示しできるものではありません。上の統計から、当社が登録支援機関として続けている進め方を3つに絞ったものです。

  • 十分に理解できる言語で、短く、毎月聞く。技能実習の方の約7割は、日本語で短い会話までしかできません。困りごとを日本語で言葉にしてもらうのを待たず、こちらから母語で聞きます。
  • 相談先を、ご本人が知っているかを確かめる。困ったことがあった方の14.9%は、どこに相談すればよいかわかりませんでした。担当者の連絡先と、機関以外の窓口を、面談のたびに伝えます。
  • 聞いたこと、したことを、その日のうちに記録する。定期届出、監査、育成就労の優良要件は、いずれも実施状況を見ます。日付と相手と内容が残っていれば、あとから示せます。

よくあるご質問

外国人材の定着率は、公表されていますか

この記事で挙げた官庁の統計に、「定着率」という指標はありません。手がかりは、特定技能の自己都合による離職(在留者の16.1%、2022年11月までの暫定値)、技能実習生の失踪者数(2025年は3,950人)、就労上のトラブルがあった方の割合(10.9%)です。

技能実習生の失踪は、増えていますか

減っています。2023年の9,753人が最も多く、2024年は6,510人、2025年は3,950人です(入管庁の速報値。行方不明を理由とする届出の集計)。理由は、入管庁の資料には書かれていません。

特定技能外国人は、辞めたあとどうしていますか

入管庁の暫定値では、帰国が31.4%、特定技能での転職が30.3%、別の在留資格への変更が15.1%です。転職が3割あるということは、辞めても日本の別の職場で働き続ける方が多い、ということです。

「定着支援」は、法令上の義務ですか

「定着支援」という名前の義務はありません。法令で決まっているのは、特定技能の義務的支援(10項目)、技能実習の監理団体の相談対応、受け入れ企業に対する厚生労働省の指針(多くは努力義務)です。定着のための取り組みは、この決まった場面の上に重ねます。

監理団体・登録支援機関は、定着のためにまず何をすればよいですか

法令で決まっている場面(相談への対応、定期的な面談)の記録の残し方を整えることからです。そのうえで、ご本人が相談先を知っているかを確かめます。くわしくは、外国人の定着を図るには。監理団体・登録支援機関が、毎月できること をご覧ください。

この記事に出てくる用語

出典(一次情報)

2026年9月25日に、上のページと資料で確認しました。統計は更新されることがあります。手続の前に、各官庁の最新の案内をご確認ください。この記事は、個別の事案についての助言ではありません。

書いた立場: 株式会社first penguin2018年から監理団体の一員として技能実習生の受け入れに携わり、2021年からは登録支援機関(登録番号 20登-005532)として特定技能の支援を行っています。「外国人材 定着コンパス」の運営会社です。